変形性膝関節症(中等度から重度)の患者さんに対し、疼痛コントロールを目的として高周波パルス治療を提供いたします。

背景

近年、疼痛コントロールの困難な変形性膝関節症に対し『Coolief* (クーリーフ)疼痛管理用高周波システム』による神経焼灼術が保険適用となりました。日本での治験は行っていませんが、アメリカでの臨床試験の結果を考慮し日本で保険適用となったものです。中等症から重症の変形性膝関節症の患者さんで、ヒアルロン酸注射などの保存的治療が奏功しない、年齢や社会的要因により人工関節置換術を選択することができない、その様な方に対し「せめて神経を焼いて痛みだけでも取り去ってあげよう」という主旨の治療となります。
用いる機器の仕組みは、針の先端からラジオ波(高周波)を出して神経を焼灼するものとなります。針先が熱くなり過ぎない様に冷却(クーリング)しながら行うためクーリーフと命名された様です。ラジオ波を用いて組織を焼灼する治療は新しい概念ではなく、肝臓がんをラジオ波で焼灼する「経皮的ラジオ波焼灼療法:RFA」は古くからある治療です。

Coolief* (クーリーフ)の条件

Coolief* (クーリーフ)に関する保険診療の扱いは以下の通りとなっています。
『末梢神経ラジオ波焼灼療法(一連として)は、次に掲げる要件をいずれも満たす場合に限り算定できる。15,000点(150,000円)
(1) 整形外科的な外科的治療の対象とならない変形性膝関節症に伴う慢性疼痛を有する患者 のうち、既存の保存療法で奏効しない患者に対して、疼痛緩和を目的として、上外側膝神経、上内側膝神経及び下内側膝神経に末梢神経ラジオ波焼灼療法を行った場合に算定する。
(2) 変形性膝関節症に関する専門の知識及び6年以上の経験を有し、関連学会が定める所定の研修を修了している常勤の整形外科の医師が、関連学会の定める適正使用指針を遵守して実施した場合に限り算定する。(令和6年版)』

つまり、6年以上の経験を擁する整形外科医であること、学会の認定を得ていることなどが要件となります。要するに、当院では保険診療として導入することはできません。

当院の高周波パルス治療器について

対して、当院の所有する高周波パルス治療器を使用した場合の診療報酬は以下となっています。
神経ブロック(神経破壊剤、高周波凝固法又はパルス高周波法使用)
3000点(30,000円)
下垂体ブロック、三叉神経半月神経節ブロック、腹腔神経叢ブロック、くも膜下脊髄神経ブロック、神経根ブロック、下腸間膜動脈神経叢ブロック、上下腹神経叢ブロック、腰神経叢ブロック

1800点(18,000円)
胸・腰交感神経節ブロック、頸・胸・腰傍脊椎神経ブロック、眼神経ブロック、 上顎神経ブロック、下顎神経ブロック、舌咽神経ブロック、蝶形口蓋神経節ブロッ ク、顔面神経ブロック

800点(8,000円)
眼窩上神経ブロック、眼窩下神経ブロック、おとがい神経ブロック、舌神経ブロ ック、副神経ブロック、滑車神経ブロック、耳介側頭神経ブロック、閉鎖神経ブロ ック、不対神経節ブロック、前頭神経ブロック

340点(3,400円)
迷走神経ブロック、横隔神経ブロック、上喉頭神経ブロック、浅頸神経叢ブロッ ク、肋間神経ブロック、腸骨下腹神経ブロック、腸骨鼠径神経ブロック、外側大腿皮神経ブロック、大腿神経ブロック、坐骨神経ブロック、陰部神経ブロック、経仙骨孔神経ブロック、後頭神経ブロック、仙腸関節枝神経ブロック、頸・胸・腰椎後枝内側枝神経ブロック、脊髄神経前枝神経ブロック

つまり、同じ神経焼灼術であっても、膝関節の鎮痛に関わる神経は含まれていません。
『Coolief* (クーリーフ)疼痛管理用高周波システム』が変形性膝関節症のみに対して使用する機器であるのに対し、当院の高周波パルス治療器は他の神経も保険適用となるなど汎用性は高いのですが、一方で残念ながら変形性膝関節症の鎮痛には保険請求できないのが現状です。

なぜ当院が提供するのか

当院は根本的な治療や、原因に則した治療を重んじています。変形性膝関節症で痛みに悩む患者さんに対し、関節保護となるヒアルロン酸注射を行うのが少しでも膝関節にとって良いことだと考えています。疼痛管理を行う、整形外科医ではない立場において痛みを伝える神経を破壊し、それにより患者さんが痛みを忘れて動くことで膝にさらなる負担をかけ、結果として関節の破壊を助長してしまう、その様なことがあってはならないと考えておりました。しかしながら、整形外科医の立場からせめて痛みを取り去るために神経を破壊しようという治療のコンセンサスが成立しているのであれば、当院としても安心して鎮痛することができます。

当院での取り組み

当院では日本人の多くの方がO脚型の変形性膝関節症となり、結果的に膝関節内側の痛みを訴える患者さんが多いことに着目し、主に膝関節の内側に分布する「伏在神経」に対し高周波パルス治療を行います。当院の機器には「焼灼モード」と「高周波パルスモード」があり、当院でも焼灼は可能ですが、高周波パルス治療は42℃で焼灼することなく一定期間の鎮痛が可能な治療法です。神経を焼灼しませんので、神経の破壊はもちろんのこと、皮膚のやけどや周囲組織の破壊も生じません。当院では他の保険適用のある神経に対し平素から治療を行っており、それを「伏在神経」に応用するだけとなります。
ただし、残念ながら「伏在神経」は上述の保険適用となる神経に含まれておりませんので、保険診療でご提供することはできません。そこで、高周波パルス治療針など消耗品の費用や所要時間など鑑み、12,000円の自費診療とさせて頂きます。
Coolief* (クーリーフ)では上外側膝神経(坐骨神経系)、上内側膝神経(坐骨神経系)及び下内側膝神経(伏在神経)の3か所を焼灼破壊することが前提ですが、実際には3か所全て破壊せずとも鎮痛可能な方はいらっしゃると考えられます。当院では上述の様にまずは「伏在神経」にアプローチいたします。

Coolief* (クーリーフ)の有用性について

Coolief* (クーリーフ)は治療して24か月後(2年後)でも鎮痛効果が持続していることが証明された有用な治療法です。手技料は15万円と高額ですが、保険診療ですので3割負担の方でも4万5,000円となります。これで2年間膝の痛みが緩和されるのであれば決して高過ぎる額ではないと考えます。当院はCoolief* (クーリーフ)をご提供することができませんが、実施医療機関へのご紹介は可能です。どうぞお気軽にお声掛けください。

注意事項

変形性膝関節症と診断されている方で、ヒアルロン酸注射など保存的治療を既に行っていることが前提です。当院の初診時から実施することはございません。当院の基準において妥当性を判断しご提供いたします。Coolief* (クーリーフ)と同様に、あくまで痛みを遮断することが目的の治療であり、関節破壊の進行を遅らせたり、関節の組織が再生するものではございません。
なおCoolief* (クーリーフ)を行う医療機関やライセンスとは無関係であり、当院独自の治療となります。一部の整形外科医師やペインクリニック科の医師が「伏在神経」への高周波パルス治療が保険適用となる様に働きかけていると話を聞いています。将来的に保険適用となりましたら、当院でも自費診療はなく保険診療としてご提供いたします。