疼痛について

疼痛の種類について

疼痛には様々な原因や成り立ちがあります。教科書的な細かな分類はありますが、当院なりにわかりやすくお伝えいたします。
以下の3つをイメージされるとわかりやすいです。

急性疼痛(※クリックして読む)

ケガや手術直後の痛み、あるいは腸炎や関節炎といった臓器の炎症による痛みです。
痛みには体の異常を知らせるサインとしての役割があります。急性疼痛はその異常のサインであることが多いです。
急性疼痛は原疾患の診断や治療が最優先です。例えば、骨折の診断や治療をせず痛み止めばかりしていたのではいけません。原疾患の診断や治療を行いながら鎮痛薬を併用するのが一般的です。これは主に原疾患を治療する病院やチームにおいてなされます。

慢性疼痛(※クリックして読む)

ケガや病気そのものは治癒したにも関わらず残ってしまった痛み、あるいは原因が取り除けないため継続してしまう痛みです。また、臓器には損傷がないにも関わらず、痛みを伝える神経が障害され、あたかも臓器が継続して損傷を受けている様に感じるものもあります。
慢性疼痛はペインクリニックなどで診断や治療を受けることが多いと思います。例えば、手術して1年以上経つのに傷が痛むといった場合、それはもはや術後の急性疼痛ではないと考えられ、術後早期とは違ったアプローチが必要なことがほとんどです。

がん性疼痛(※クリックして読む)

がんを原因とする疼痛です。刺し込む様な急性的な痛みもあれば、慢性的な鈍い痛みもあります。
痛みの原因という面から、がん性疼痛は分けて考えることが多いと思います。
がん性疼痛は原疾患であるがんを治療する病院やチームで対処することが一般的です。がんを専門的に扱う病院や医師は、がん性疼痛に対する対処法も心得ています。しかしながら、より高度な疼痛管理を求める場合、神経ブロックなどの手技や麻薬の扱いに慣れているペインクリニシャンが介入することもあります。

当院ではがん性疼痛の管理も承ります。がん性疼痛の治療は決して終末期医療(ターミナルケア)とイコールではありません。また、「がんは痛みが出たら死期が近い」、「痛み止めを使い出したら死期が早くなる」など昔からよく言われていますが、これらが正しいとは考えていません。医療者側でも、「痛がるくらいなら眠らせた方が良い」、「がんの痛みを抑えるのだから副作用が強くても仕方ない」など誤った押し付けをすることがあると聞きます。たとえ死期が近くなったとしても、最期まで生活を損なわないコントロールを心がけることが大切です。

がんのステージや痛みの程度に合わせて、その時々に最善と考えらえる治療を提供することが大切です。そしてそれは他の疼痛管理と比べて特別なことではなく、患者さんが日常生活を保つためにどの治療が最善かを考え提案していくことになんら違いはありません。


疼痛治療について

ペインクリニックで行う疼痛治療は現在以下の5つの要素に分類されます。

薬物療法(※クリックして読む)

内服薬や外用薬、注射薬などを使用して治療を行います。一般的な鎮痛薬の他、モルヒネなどのオピオイド鎮痛薬(いわゆる医療用麻薬)、鎮痛補助薬、漢方薬などを使用します。

インターベンション治療(※クリックして読む)

直訳すると介入治療という意味で、主として神経ブロックがこれに含まれます。

手術療法療(※クリックして読む)

神経ブロック以外の侵襲的な治療を含み、手術室など高度な設備で行うものになります。当院では行っておりません。

リハビリ療法(※クリックして読む)

主に理学療法士によるリハビリにより関節や筋肉の状態を改善させ疼痛の軽減を図るものです。

認知行動療法(※クリックして読む)

いわゆる精神心理面からのアプローチを行う治療法です。臨床心理士が大きな役割を果たします。また、精神科医の診察を必要とすることがあります。

疼痛の原因や患者さんの背景、またはゴールの設定に応じて上記の中から治療法を選択して行います。決して上記の治療法に決まった順番があるわけではありません。また、単独の治療法で改善することもあれば、複数の治療法を要することもあります。それぞれは完全に独立したものではなく、組み合わせることでより効果を得られることがあります。
当院では主に薬物療法、神経ブロックを行います。リハビリ設備および理学療法士、臨床心理士は揃っておりませんので、リハビリ療法および認知行動療法の必要な方は他院と適切に連携させて頂きます。

メッセージ(※クリックして読む)

疼痛治療において大切なポイントはゴール目標をどう設定するかです。 特に慢性疼痛の治療において、単に「痛みゼロ」を目標にすると、それは叶わず不満を残すケースが多くなります。例えば、手術後の古キズの痛みや交通事故などの後遺症としての痛み、年齢により関節が破壊されて生じる痛み、これらはそもそもの原因をなかったことにはできませんので、「痛みゼロ」を目指すのは難しくなります。

医学的に「痛みゼロ」の状態を作ることが不可能ということではありません。薬剤の量を増やしたり、神経ブロックを頻回に繰り返したりすることで痛みを限りなくゼロに近づけることは可能かもしれません。しかしながら、薬剤の作用により日常生活に支障をきたすような眠気や吐き気、またはめまいなど有害な症状も現れますし、むやみに神経ブロックを繰り返せば、意図しない神経の損傷破壊や感染症、出血などの合併症を生じるリスクも増加します。また、毎日の様にクリニックに通い神経ブロックをすることは、日常生活を考えた際には非現実的と言わざるを得ません。要するに、「痛みゼロ」の状態を作り出すことができても、かえって日常生活を損なってしまう可能性があるということです。

疼痛管理においては、痛みのない体を取り戻すのではなく、痛みと上手に付き合いながら日常生活(生活の質)を取り戻すことが大切だと考えます。特に、痛みに恨みや辛みの気持ちを乗せてしまうと、問題解決は遠のいてしまいます。
当院では、患者さんご自身の症状に対する認識や治療への希望、想いを聞き取り、どの様な治療がその方にとって最良かを一緒に考えご提案いたします。治療内容によって当院で対応できない場合は専門施設と適切に連携いたします。
ペインクリニシャン、あるいは整形外科医、理学療法士、臨床心理士がそれぞれに患者さんへ治療メニューを押し付けるのではなく、患者さんを真ん中に、上記の多職種が患者さんを囲むように協力して治療を行うのが理想と考えています。