高周波パルス治療とは
専用の注射針を用いて神経組織に高周波電流を出力し、組織のイオンを振動させることにより発生する熱を用いて、神経細胞の蛋白質成分を加温させることにより鎮痛効果を得る治療法です。わかりやすく説明すると、針先から電気が流れ、神経や神経の周囲を42℃程度に温めます。加温による効果だけではなく、発生させた電場(いわゆるビリビリした環境)が神経に作用し、痛覚が一時的に減弱するとされます。鎮痛効果は数週間から場合によっては半年程度持続するとされています。神経組織の熱凝固を伴いませんので、痛み以外の感覚や運動神経は障害されず普通の生活を送ることができます。
💡なぜ通常の感覚や運動神経は保たれるのに痛覚だけが減弱するのか、なぜその様な都合の良い効果が得られるのかについては、公的な科学的説明を拝見したことがありません。
高周波とは
周波数の高い電流は高周波電流と呼ばれます。工業関係では高周波電流を用いた加熱における「高周波」は3MHzから300MHzあたりを指すそうです。これは電流の向きが1秒間で300万回から3億回も反転することを意味します。家庭用コンセントに流れている電流の周波数が50Hzか60Hzであることと比較すると、非常に高い周波数であることがわかります。高周波電流によってできる電界の向きも非常に早く反転します。このような電界を高周波電界と呼ぶそうです。高周波電界にさらされた生体組織の分子は激しく揺さぶられ、この振動により加熱されるのです。
パルスとは
パルスとは短い時間に流れる電流やその繰り返しを指します。つまり、上述の高周波電流が短い時間で断続的に、そして繰り返し流れることを指します。パルス状に通電することで組織の過剰な加熱や凝固、組織の損傷を生じることなく効果を及ぼすことができると考えられます。
効能・効果
当院所有の器機の添付文書には「顔面痛、頚部痛、腰痛等の慢性疼痛治療の為、疼痛部位の神経細胞に高周波電流を供給し、神経細胞を加温するために使用する」とあります。つまり、原則として体のどこの部位であっても、疼痛部位の責任神経を特定することができれば、そしてそれが穿刺可能な部位であればこの治療を施行することが可能です。
治療の手順
①超音波ガイド下、あるいは透視下にて目標となる神経を確認します。
②穿刺位置を決め、穿刺部に局所麻酔(皮膚の麻酔)を行います。通常のブロック針よりも少し太いため、穿刺時の痛みを軽減するため皮膚の麻酔を先に行います。
③目標の神経に針先を近づけた後、確認用の弱い電流を流して知覚や運動(筋肉の動き)の様子を確認します。この確認用の電流により神経が損傷されることはありません。
④上記により針先の位置が正しいことを確認し、高周波パルスを行います。1か所につき5分から6分程度通電します。場合により複数個所に行うことがあります。
⑤通電が終了しましたら、針を抜いて終了です。必要に応じて休憩して頂きます。
診療報酬における位置づけ
高周波パルス治療法は神経ブロックの一環として算定されます。その際に「神経破壊剤、高周波凝固法又はパルス高周波法使用」の部類として扱われます。治療する神経により下記の様に手技料は決められています。なお、下記は神経破壊剤によるブロックも含めた表記ですので、高周波パルス治療では行わない神経ブロックも含まれます。また、下記神経ブロックの全てが当院で対応可能ということではありません。
3000点(30,000円)
下垂体ブロック、三叉神経半月神経節ブロック、腹腔神経叢ブロック、くも膜下脊髄神経ブロック、神経根ブロック、下腸間膜動脈神経叢ブロック、上下腹神経叢ブロック、腰神経叢ブロック
1800点(18,000円)
胸・腰交感神経節ブロック、頸・胸・腰傍脊椎神経ブロック、眼神経ブロック、 上顎神経ブロック、下顎神経ブロック、舌咽神経ブロック、蝶形口蓋神経節ブロッ ク、顔面神経ブロック
800点(8,000円)
眼窩上神経ブロック、眼窩下神経ブロック、おとがい神経ブロック、舌神経ブロ ック、副神経ブロック、滑車神経ブロック、耳介側頭神経ブロック、閉鎖神経ブロ ック、不対神経節ブロック、前頭神経ブロック
340点(3,400円)
迷走神経ブロック、横隔神経ブロック、上喉頭神経ブロック、浅頸神経叢ブロッ ク、肋間神経ブロック、腸骨下腹神経ブロック、腸骨鼠径神経ブロック、外側大腿皮神経ブロック、大腿神経ブロック、坐骨神経ブロック、陰部神経ブロック、経仙骨孔神経ブロック、後頭神経ブロック、仙腸関節枝神経ブロック、頸・胸・腰椎後枝内側枝神経ブロック、脊髄神経前枝神経ブロック
※使用する針やその他物品はお一人様ごとに使い捨ての消耗品となります。これらの使い捨て消耗品だけでも調達費は3,400円をはるかに上回るため、340点の手技料では診療が成り立ちません。そのため340点の手技は当院では原則としてご提供できません。通常の局所麻酔薬を用いたブロックをさせて頂きます。該当する神経ブロックをどうしても高周波パルス治療で受けたい場合はご相談下さい。また、上記に記載のない神経については診療報酬に設定がないため、当院では保険診療として請け負うことができません。国の定めた診療報酬(点数)と治療の実態、市場価格が合っていないことが原因ですので、どうぞご容赦下さい。
ご注意
・当ページは当院で実際に治療を受けられる患者さんに対し、治療の参考にして頂くために作成しています。不特定多数の方に広く医学的情報を周知するためのものではありませんので、当ページの情報を元に当院以外で生じたトラブルなどに関し、当院では責任を負いません。
・高周波パルス治療の適応やメリットがあるかどうかは、診察や通常の神経ブロックの治療経過に応じて決まります。患者さんの側から指定あるいは限定して行うものではありませんのでご了承下さい。
・高周波パルス治療は保険診療では同じ部位に対し月に1回までの算定となり、同じ部位に対して月に2回以上行うことはできません。
・上記の情報は2024年6月時点でのものになります。